溺れろ、乱れろ、そして欲しがれ
よし、これで終わり。

時計の針は定時の17時を少し過ぎた頃。

梶谷さんを見ると、、、まだかかりそうかな。

時間を潰すために、明日の裁判で使う資料に目を通すことにした。

「楢岡さん、ちょっといい?」

いつの間にか私のデスクの脇に立って見下ろす東雲さんがいた。

「あ、はい。」

後ろを付いていくと喫煙室。

煙草吸うとこ初めて見たかも。

細くて長い指に煙草を吸う口元、煙を吐き出すときに細める目、なんか、色香ヤバいんですけど!

好きとかの感情がなくても見惚れてしまう。

「楢岡さん、明日の裁判よろしく。」

「え?あー、はい。え?それだけで呼んだんですか?」

「うん」

はあ?

そんなの、ここまで連れて来る必要なくない?

あの場で言えば済むことじゃない。

何を考えてるんだか、ワケわからない。

「じゃあ、私は戻ります」

踵を返して、一歩踏み出したとき、ギュッと掴まれた左腕


な、なに?

振り返った私と真っ直ぐに絡まる東雲さんの視線。

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