溺れろ、乱れろ、そして欲しがれ
きっと、慶太はわかってたんだ。

久しぶりのお酒に飲まれることを、、、

だからあえて本来の味にして飲むのを止めたんだ。

なのに私はそんな優しさにも気付かないなんて。

「ほら、掴まって。」

慶太の腰に手をあてて、慶太も私の腰をしっかりと抱きとめてくれた。

「慶太、、、ごめんね。私、ずっと慶太に甘えてた。」

「なんだ、今さらそんなこと。気にしてない。」

「でも、私のせいで、慶太は彼女も作れないでしょ?
だから、もう大丈夫だからさ。慶太も幸せになって?」

抱き止める腕にぐんと力が入り、歩いていた足をとめた。

ん?

見上げた先には慶太の悲しそうな横顔が、月明かりに煌々と照らされている。

「慶太?」

視線はずっと前を見たまま。

慶太は静かに口を開いた。

「俺が同情とか心配性だからとか、そんなんで二年もそばにいると思う?」

「、、、えっ?」

「そんな出来た男じゃないよ。俺は、、、希が、、」


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