溺れろ、乱れろ、そして欲しがれ
「絶対にない!有り得ないッ!」

息巻いてフガフガしてる私と相反して、急に真面目な顔に切り替わった東雲さん。

コツンと靴音を響かせて一歩二歩近づくと、いとも簡単に抱き寄せられる。

ふわりと香るタバコと、密に重なる体温、トクントクンと規則的な鼓動。

本能が動き出す感覚。

やっぱり、この人は危険だ。

気を抜いたら最後、蜘蛛の糸みたいに絡みとられて行き場をなくしてしまう。

早く、一刻も早く逃げなきゃ。

なのに、抱きしめる力は強くてビクともしない。

恐る恐る顔をあげると、熱っぽい眼差しが私を映した。

あぁ、ダメ。

金縛りにでもあったみたいに身体も視線も微動だにしない。

唇がそっと触れる。

熱い。

唇を上気した舌がなぞりながら、押し入ってくる。

絡まる舌と隙間から溢れる吐息が耳を貫く。

「んっ、、、ふぁ、、、っ」

甘ったるい自分の声に恥ずかしくなりながらも、一向に止まることのない強引なキスに、気付けば溺れていた。



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