溺れろ、乱れろ、そして欲しがれ
何もないまま10日が過ぎた頃だった。

思いがけない一報が私の鼓膜を振動させる。

「東雲さん、子供いたんですよー。もう、私ショックで、、、」

仕事帰り、梶谷さんに突然飲みに誘われたから何事かと思ったら、いきなり爆弾投下?

なんのイタズラ?


「それ、どういうこと?」

「あ、珍しく食い付きましたね」

あ、しまった。

適当に誤魔化さなきゃ。

「あー、いやほら、仕事する上で禁句なら知っておいた方がいいかと思って」

「なーんだ。結局、楢岡さんは仕事優先なんですね。私は動揺しまくりで仕事なんて手が付かないくらいなのに。」

「うん。そっか。結構、本気だったんだね」

「そりゃそうですよー。でも、結婚してるなら話は別ですからね。ショックだけど、諦めなきゃ」

「でも、それ誰に聞いたの?」

「あー、見たんです。」

思い出すように、遠い目をしてから、クルクルとおしぼりを丸めたり伸ばしたりを繰り返した。


< 87 / 200 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop