嘘つきは恋のはじまり
先日、同僚で後輩の亜美ちゃんに合コンに誘われたのを思い出した。
あの時は全然乗り気ではなくすぐさま断ったけれど、もう一度頼んでみようかと、恥を忍んで彼女に声をかけた。

「ねえ、この前誘ってくれた合コンなんだけど、私参加できる?」

一度断ったのが申し訳なくて、遠慮がちにゴニョゴニョとした口調になってしまう。
亜美ちゃんは驚いた顔になったけれど、すぐに満面の笑顔で言った。

「もちろんです!水沢さんに断られてから何人か声かけたんですけど全然人集まらなくて。来てくれるなら大歓迎ですよ。でもどうしたんです?どんな心境の変化ですか?」

「いや、まあ私もアラサーだしね。自分から出会いを見つけにいかないとダメかなー…なんて。」

母の手術のため切羽詰まってるとはとても言えず、私は当たり障りのない回答をする。
亜美ちゃんは特に疑うこともなく「あー、わかりますー」と軽く同意して頷いた。

合コンなんて久しぶりだ。
何かいい出会いがあるといいなと思いながら、あっという間に当日を迎えた。
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