嘘つきは恋のはじまり
「ごっ、ごめんなさいっっっ!」
慌てて頭を下げると、「水沢さん?」と名前を呼ばれた。
え?と思って顔を上げると、スーツ姿の津田さんが立っていた。
「どうしたの?」
「あ、あの、病院へ。急いでいて…。」
思いの外動揺しているのか、すんなり言葉が出てこない上に声が震えてしまう。
母のこともあるけど、ぶつかってしまった罪悪感と、落ち着きたいのに落ち着かない自分自身に、もうどうしたらいいかわからなくなっていた。
「大丈夫?顔色悪いけど。」
「えっと、私じゃなくて母が…。あのっ…。」
「水沢さん、落ち着いて。」
「ああ、どうしよう。」
どうしようと思えば思うほど、心に余裕がなくなる。
込み上げてくるものがあり目頭が熱くなってしまう。
けれど津田さんの前だしという自制心がわずかながら働いて、必死に堪えた。
と、思っていた。
「…っう。」
わずかに漏れた声に津田さんの表情が曇ったのがわかって、私はさっと目をそらした。
そのまま走って逃げようかと一歩を踏み出したのに、ぐっと手首をつかまれる。
「咲良、落ち着いて。」
突然に名前を呼ばれて、私はすべての思考が停止してその場で固まった。
慌てて頭を下げると、「水沢さん?」と名前を呼ばれた。
え?と思って顔を上げると、スーツ姿の津田さんが立っていた。
「どうしたの?」
「あ、あの、病院へ。急いでいて…。」
思いの外動揺しているのか、すんなり言葉が出てこない上に声が震えてしまう。
母のこともあるけど、ぶつかってしまった罪悪感と、落ち着きたいのに落ち着かない自分自身に、もうどうしたらいいかわからなくなっていた。
「大丈夫?顔色悪いけど。」
「えっと、私じゃなくて母が…。あのっ…。」
「水沢さん、落ち着いて。」
「ああ、どうしよう。」
どうしようと思えば思うほど、心に余裕がなくなる。
込み上げてくるものがあり目頭が熱くなってしまう。
けれど津田さんの前だしという自制心がわずかながら働いて、必死に堪えた。
と、思っていた。
「…っう。」
わずかに漏れた声に津田さんの表情が曇ったのがわかって、私はさっと目をそらした。
そのまま走って逃げようかと一歩を踏み出したのに、ぐっと手首をつかまれる。
「咲良、落ち着いて。」
突然に名前を呼ばれて、私はすべての思考が停止してその場で固まった。