嘘つきは恋のはじまり
「そうだ、亜美ちゃんに付き合ってるって言ったの?」

帰る道すがら聞くと、だいちゃんはすまなさそうに頬を掻く。

「上手く断る理由が思いつかなくて。恋人の契約は終わってたけど付き合ってるって嘘をついたんだ。」

なるほど、そういうことか。
亜美ちゃんの言っていたことがわかった気がする。

「だけど、嘘は本当にすれば嘘じゃなくなるだろ?」

歩いている私の手を取って、だいちゃんが言う。
握られた手のひらから伝わる温かさに、私は胸がいっぱいになる。

「咲良が好きだから、本当の恋人にしたいと思った。俺はずっと、小学生のときから、咲良が好きだったよ。」

思わぬカミングアウトに、私は嬉しくて嬉しくて鼻の奥がつんとして、ぐしゅぐしゅと鼻をすすった。
私だって、小学生のときからだいちゃんが好きだった。
同じ気持ちでいてくれたことが嬉しくて、そしてこうして想いを通わすことができた。
こんな奇跡みたいなこと、私の身に起きるなんて。
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