嘘つきは恋のはじまり
そんなたわいもない話をしていたら、放送で蛍の光が流れ始めた。
あと5分で面会時間が終わるのだ。

「じゃあ、また明日来るね。明日は残業じゃないと思うから、いつも通りの時間に来るつもり。」

「別に無理しなくていいわよ。」

「明日はお腹の水、抜くんでしょ?」

「そうみたいね。」

母は自分の処置のことなのに他人事のように言った。
洗濯物の入った紙袋を忘れずに持って、病室のドアを開ける。
じゃあ、と振り返ると同時に、

「咲良。ありがとう。」

と母は言った。

「…おやすみなさい。」

私は呟くように応えて、病室を後にした。
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