俺の恋人曰く、幸せな家庭は優しさと思いやりでできている「上」
恋人との毎日はお菓子より甘い
これは、長く続いた世界大戦が終わった二年後の物語ーーー……。

ドリス国にあるこの一軒家に、俺、リーバス・ヴィンヘルムは住んでいる。二十八歳の警察官だ。

「ク〜ン…」

朝、飼い犬のベルが俺を起こす。散歩に連れて行ってほしいという催促だ。

「ベル、おはよう」

俺はベッドから出てベルの頭を撫でると、すぐにベッドに視線を戻す。

そこには、この家で一緒に暮らしている恋人のクリスタル・モーガンが寝息をたてて眠っていた。

クリスタルは、実はドリス国の隣国であるタンバリー国の王女だ。しかし、色々あって俺と恋仲となった。

「……髪、伸びたな……」

俺は、クリスタルの美しい栗色の髪を撫でる。クリスタルの髪は二年前、世界を翻弄させていた黒幕ジャック・グラスと対峙した際に、短く切ってしまった。短い髪もかわいらしくてよかったが、今の長さも似合っている。

「ク〜ン」

ベルが俺の手に自分の鼻を押し付ける。早く行こう、という合図だ。

「わかった。すぐに行こう」

俺は苦笑しながらパジャマから服に着替え、クリスタルの頰にキスをして、家を出た。
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