俺の恋人曰く、幸せな家庭は優しさと思いやりでできている「上」
クリスタルの話を遮って、フィリップは目を輝かせながら言う。人の話を最後まで聞くということを教わらなかったのか?

「フィリップ王子、私たちが行くのは庶民のお店です。あなたの言ういい店とは…高級料理店のことですよね?」

「その通りです!!おいしくて豪華な料理が並んでいますよ!」

クリスタルは完全に困っている。俺は助けることにした。

「王子様、クリスタルが困っています。ご一緒したければ、私たちと同じ店に来ることになりますがよろしいですか?」

庶民の店、と言えば引き下がるかと思ったが、フィリップの言葉は俺たちにとって最悪だった。

「行こうではないか!!クリスタル王女は、庶民の味方だ!!」

フィリップは俺を睨みつけながら言う。俺は完全にこの王子に嫌われているようだ。まあ、好かれてもろくなことがないと思うが…。

「リーバス…」

クリスタルが困ったような顔を見せる。俺は耳元に口を寄せ、「勝手について来させればいい。俺はお前を離したりはしないからな」と言って耳に口付ける。

「は、はい…」

クリスタルは顔を赤らめる。かわいい。止められなくなりそうだ。

「王女!さあ、馬車にお乗りください!」

怒りで顔を引きつらせながら、フィリップが言う。クリスタルはすぐに首を横に振った。

「いいえ。私はリーバスと歩いていきます」

そのままフィリップを置いて、俺たちは歩き出した。
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