俺の恋人曰く、幸せな家庭は優しさと思いやりでできている「上」
俺は独房の中で、こっそり嗤った。



フィリップは宣言通り俺たちと一緒に「オレンジ」にやって来て、俺たちと同じテーブルで食事をした。

高級な服に身を包んだ王子の姿に、他の客がジロジロこちらを見つめ、俺は居心地が悪かった。それはクリスタルも同じだったようで、いつもはウキウキしながら頼むデザートも今日は頼まない。

そんな俺たちを無視して、フィリップは笑いながらクリスタルに話しかける。

クリスタルが困った表情を見せるたびに、俺の胸は痛んでどうしようもなくなる。この地獄から早くクリスタルを解放してやりたい。

考えいるのは、それだけだった。

食事を済ませた後、俺とクリスタルは死んだ目で、フィリップは楽しそうだった。

「ああいう店も悪くはないですね!まあ、クリスタル王女には、もっとゴージャスなお店が似合うと思いますが…」

そう言ってフィリップはクリスタルの肩を抱こうとする。俺はそれよりも先にクリスタルを引き寄せ、「フィリップ王子、人の恋人に手を出すのはやめていただきますか?」と相手を睨む。

本来なら殴り飛ばしたいが、そんなことをすれば俺の首が物理的に飛んでしまうだろう。衝動をこらえる。
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