俺の恋人曰く、幸せな家庭は優しさと思いやりでできている「上」
「ごめんなさい…。最近、食欲が全然なくて……」

クリスタルは申し訳なさそうに言い、椅子から立ち上がった。

クリスタルの体からは、いつもの元気はない。どうすれば、クリスタルの不安を少しでも和らげることができるのだろうか。

ふと、嵐の夜のことを思い出した。クリスタルは雷が苦手で、その日はずっと震えていた。そこで俺はずっとクリスタルを抱きしめてーーークリスタルと初めて体を重ねた。

怖がっていたクリスタルが、俺の腕の中で安心したような表情で眠った時のことを思い出し、俺はクリスタルを抱きしめようと決めた。

食器を片付け、風呂に入った後、クリスタルはソファに体を沈めてうつむいていた。一人の時は、いつもこうだ。

俺はクリスタルの隣に座る。クリスタルは驚いた顔を俺に向け、「リーバス…」と疲れたような笑みを見せた。

「クリスタル……」

俺はクリスタルの華奢な手を取り、その手の甲にキスをする。クリスタルの頰が赤く染まった。

キスをした後、俺はクリスタルを壊れないように優しく抱きしめる。クリスタルは抵抗することなく、俺の腕の中だ。

「……俺は、こうしてお前を抱きしめてやることしかできない。不安を全て、取り除いてやることはできない。すまない、こんな男で……」
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