俺の恋人曰く、幸せな家庭は優しさと思いやりでできている「上」
「……いい子だ……」

俺はクリスタルの首すじに口を近づけ、強く唇を当てる。俺の唇が離れると、そこにはきれいな印が付いていた。俺のものという印……。

甘い、甘い夜は続く。クリスタルの豊かな胸や体に触れ、キスを繰り返し、体中に印をつける。

「……リーバス、好き…だよ!」

クリスタルが俺の背中に腕を回し、かわいい表情を見せる。俺はクリスタルのおでこに口付け、「俺も好きだ。……愛している」と言った。

俺の腕の中で眠るクリスタルの表情は、穏やかでジャックが脱獄する前と変わりない。俺はそのことに安心した。

翌日、俺の腕の中で目を覚ましたクリスタルは、「おはよう」と美しい笑顔を見せる。

俺も、「おはよう」と微笑みながら、必ずクリスタルをジャックから守ると誓った。

恋人と触れる夜は、どんなに凍えるような冬でも、悲しみや苦しみの中でも、温もりを体中に巡らせてくれる。とても愛しい時間だ。

夜は、温かくて優しい。



ギール国の港。俺は黒いコートにカツラをつけ、帽子を深く被り変装している。

運が味方をしてくれれば、俺はギール国から出国し、ラス国に行くことができる。

ラス国からは鉄道を乗り継ぎ、ドリス国へ行くつもりだ。まあ、ギール国から無事に出ることができればの話だがな。

「おい」

深緑の制服を着た警官が、俺に話しかける。俺の心臓が珍しく緊張をし始めた。

「帽子を取れ。ジャック・グラスじゃないだろうな?」

ここで下手に抵抗すれば、間違いなく怪しまれる。大丈夫、俺の変装は完璧だ。
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