俺の恋人曰く、幸せな家庭は優しさと思いやりでできている「上」
そんなリーバスを、男子は胸ぐらを掴んで無理やり立たせる。

「な、何を…」

驚くリーバスに、男子はニヤニヤと笑う。

「俺はこの孤児院で一番強いんだ。それをわからせてらせてやるよ」

リーバスはまだ武術を知らない。男子が振り下ろす拳を、ただ固く閉じて待つしかできない。しかし、その拳はいつまでたってもリーバスに触れることはなかった。

「あんたたち、見っともない真似はやめな!!」

男子の拳をしっかりと掴む女子がいた。ベリーショートの金髪に赤い目の女子。男子二人は「ゲェッ!」と間抜けな声を上げる。

「ロビン・ターナー!」

ロビンは武術に優れ、孤児院で一番強いとも噂されている。男子はすぐにリーバスを放した。

「それで?どっちから先に相手をすればいい?」

腰に手を当て、訊ねるロビンに、男子二人は「結構です!」と叫びながら逃げていった。

「リーバス、大丈夫か?」

ロビンがリーバスに訊ねる。その目には、たしかな心配があった。

「ああ、お前のおかげで無事だ。しかしお前は女だろ。いくら強いからといっても男の方がーーー」

リーバスが説教を始めようとすると、「ストップ!」とロビンが叫ぶ。

「あんた、私より弱っちいのに何で説教すんのよ!せっかく助けてあげたのにさ」

「お前が心配だからだろうが!」

側から見れば口喧嘩をしているように見えるが、この二人は友達だ。

両親を亡くしてここに来た、という境遇が同じだったからか、自然と二人は仲良くなった。リーバスが仲がいい女子はロビンだけだし、ロビンも女子と一緒にいるより男子といる方が多い。
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