俺の恋人曰く、幸せな家庭は優しさと思いやりでできている「上」
俺たちは街を散策することを楽しんだ。クリスタルとエリザベス様は、お揃いのブレスレットを買いはしゃぎ、レオナルド様は新しい筆を買っていた。俺とハリー様は互いにオススメの本を言い合ってその本を買った。

「ねえ、どこかカフェで休憩しない?」

クリスタルがそう言うと、「賛成です!」と三人から同時に声が上がる。俺とクリスタルは笑った。

「クリスタル、たしか「グレーテル」がおいしかったよな」

前に街に来た時に入ったカフェを思い出す。あそこのパンナコッタはおいしかった。

「うん!あそこ、とてもきれいだしね!そこに行こう!」

三人はカフェに行ったことがないようで、目を輝かせながら、「どんなところなのですか?」と訊いてくる。その無邪気な顔は、クリスタルに似ている気がした。

街はお昼時で、相変わらず活気であふれている。多くの人が行き交うので、ぶつからないように慎重に歩く。

その時、前方から色とりどりの服を着た人々に混じって黒い服に身を包んだ女性が歩いて来ることに俺は気がついた。黒い服は、教会関係者の着ている服だ。

その女性は、クリスタルを見て何かを思い出したかのような表情を見せた。そして、驚くほどのスピードでこちらへ向かってくる。

「えっ?」

クリスタルがその女性に気づき、少し驚く。俺は刺客かもしれない、と念のためにクリスタルの前に立った。
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