俺の恋人曰く、幸せな家庭は優しさと思いやりでできている「上」
その女性は、急いで来たためか荒い呼吸を繰り返している。クリスタルが「大丈夫ですか!?」と言いながら、俺の背後から飛び出し、女性の背中をさすった。

その女性の髪は、白髪混じりだが美しい栗色の髪をしている。

女性はクリスタルの手を包み、涙をこぼしながら言った。

「やっと…やっと会えた…!私の名前は、アリーチェ・フェルナンデスです…」

その刹那、クリスタルの表情が変わった。驚きと戸惑いを浮かべている。

俺もその名前に驚く。初めて城を訪れた時に、国王陛下から聞いた名前だ。

クリスタルを生んだ母の名前を……。



私の父である国王の髪は、金髪。だから私の栗色の髪は、間違いなく母から受け継いだものだとわかった。

こんな偶然があるなんて…。私は目の前で微笑むアリーチェさんを見つめた。突然の再開だし、「お母さん」なんて呼べない。

「あの、二人で話したいの…。一緒に来て?」

アリーチェさんは、私の手を包んだまま、優しい顔で言う。私は心が揺れそうになったが、その前にリーバスが「なら、私も一緒に行きます」と答えていた。

「申し訳ありませんが、あなたのことをまだ信じたわけではない。クリスタルを守るためです」

リーバスは、まっすぐにアリーチェさんを見つめる。アリーチェさんは、「あなたは…?」と首を傾げた。私は口を開く。

「彼は、リーバス・ヴィンヘルム。私の恋人です」

アリーチェさんは驚き、「そう…」と嬉しそうにする。その姿は、私が幼い頃思い描いた「お母さん」の姿だ。
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