俺の恋人曰く、幸せな家庭は優しさと思いやりでできている「上」
「クリスタルは、ずっとあなたに会いたがっていました。城へ初めて報告に行った際に、真っ先に訊いたのはあなたの名前です」

リーバスがそう言うと、アリーチェさんの目に涙が溜まる。

「……ごめんなさい……」

アリーチェさんは泣きながら言った。

「あなたがお腹の中に宿った時、嬉しかった。国王陛下たちは流産させようとしたけど、私はどうしても産みたかった。あなたの鼓動を聞いた時、あなたの胎動を感じた時、とても幸せだったから…。あなたを産んだ時、一緒に連れて行くつもりだったの。でも、私は無一文であなたに苦労をかけてしまう。なら、お城で暮らした方が幸せなんじゃないかと思ったの…」

アリーチェさんは、ゆっくりと語ってくれた。私とリーバスはただ黙って話に耳を傾ける。

「あなたにずっと会いたかった。あなたと離れた後、私は仕事を転々とした。でも、一日たりともあなたを忘れたことはなかったわ。……やっと、会えた……」

その涙が嘘じゃないって、すぐにわかるの。だって私は、お城の中で汚い人たちをたくさん見てきたから。嘘なんて、すぐにわかるから。

「……お母さん!」

私も泣きながら、お母さんに抱きつく。「私も会いたかった」と言いながら、大声で泣いた。緊張なんて、もうどこにもない。

しばらく泣いた後、私とお母さんはいろんなことを話した。別れてからの暮らし、私がリリー・オクトだった時のこと、今の生活ーーー。時を越えてやっと親子になれた瞬間。
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