硝子の恋

狂っていく

その日は眠れなかった。

ボーとした頭では勉強だってろくに入らず、ただ授業をボーと眺めていた。

先生は黒板を叩きなにやら熱心に数学論を語っている。

こつ……

私の頭に何かが当たる。

小さい消しゴムだった。

藤井さん達が私を的にして消しゴムをちぎって投げている。

先生は気づいていない。

それでも、私は昨日の事がショックで、消しゴムくらいどうでもいいかなーと思っていた。

おじいさんのあの電話。

信じたくはなかったけれど、あの声は間違えなくあのおじいさんの声だった。

多分、胸につけていたネームプレートから私の名前を知ったんだろう。

それでも山下なんて名前はたくさんある。

それをかたっぱしから電話をかけて調べるなんて、常識からはずれている。

警察に行った方がいいのかな?

でも、今のところ被害ないし……動いてくれるのかな?

あー頭がぐるぐるする。

私の頭に当たった消しゴムは、私の机に落ち、すでに結構な数になっていた。

もったいないなーと思いながらもその消しゴムを払う。

すでに私の頭に消しゴムを当てるのはいじめを超して競技になっているらしい。

藤井さん達が熱心に消しゴムを投げてくる。

でも、まぁ、そんなのいつものことだし?

我慢出来ないこともないし?

これくらいじゃ怒ったり泣いたりしないよ?私。



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