硝子の恋
「じゃあ俺はこれ終わったら生徒会行くけど、一緒に行く?」

「あ、うん。そうする」

誠君ががりがりと絵の具を塗りたくりながら私に聞いてきた。

「乾いてないのを放置していいの?」

「油絵は乾くのに何時間もかかるんだ。それこそ1日2日だって乾かない事もある」

「へー」

「だからいろんな色を混ぜやすいってのもあるけどね」

なんだか新しい情報を得た気分だ。……多分役には立たないけれど。

「じゃあ生徒会室に行こうか」

あらかた色を塗りおえ、油絵をしまった誠君が私の横に立つ。

あ、結構背、高いんだ。

「ん?何?」

「なんでもない。でも、どうして私を美術部に誘ったの?」

それが聞きたかった。

「あー……うん、絵の良さを知って貰いたかったってものあるし……」

「あるし?」

「俺の良さを知って欲しかったってのもあるかな……」

「は?」

「いや、冗談だって。そんな顔するなよ」

そんな顔って……どんな顔よ?

たいして長くもない距離を二人で歩く。

相手は美術部部長兼生徒会長。生徒の憧れの人。

でもやっぱりこれと言った話題はなく、ただ無言で生徒会室まで歩いた。

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