硝子の恋
体育祭が近い。

季節はうだるような暑さの夏から丁度秋にかわっていた。

「体育祭の準備は万全か?」

先生が聞いてくる。

と言っても、生徒会役員なんてプログラム作って、先生と生徒との連絡の橋渡しくらいしかしないんだけどね。

「プログラムは出来ました」

私はそう言って、先生にパンフを渡す。

先生はざっと見てうなずきながらパンフを私に返した。

「大丈夫そうだな。じゃああと機材の用意や当日のしきりは任せるからな」

先生はそれだけを私に言うと、誠君の所に行った。

なにやら難しい話をしている模様。

でも私には関係ないし?

暫く先生と誠君は話し込んでいたけれど、やがてまた先生は違う生徒に声をかけにいった。

……先生も忙しいんだなぁ


「山下、仕事終わった?」

「一応ね」

誠君が話しかけてくる。

「じゃあちょっと美術室こない?」

「なんで?」

「息抜きになるかなって。最近元気ないからさ」

「行ってきたら?」

由衣ちゃんが不意に話に入ってきた。

「きょーちゃん、絵の才能あるって前に誠君言ってたじゃん。

いっそ入っちゃいなよ」

……そう簡単に言わないで欲しい。

私は中学で習った黄金律とか、彫刻とか、全く分からないんだよ?

「まぁ、うちのやる気ある連中を見てやってくれよ」

そういえば前に誠君が描いていたあの絵はどうなったんだろう……

気になるなぁ……

「うん、いいよ。見に行く」

私が言うと誠君の表情が明るくなった。

「じゃあ俺荷物まとめるから。山下も帰る用意しておけよ」

誠君は、そう言って会長の椅子があるところまで慌てて戻り、なにやら書類やらノートやらをカバンに詰め込んだ。

……不覚にも、男の子に可愛いと思ってしまったじゃないか。
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