硝子の恋
私が少し休憩している間にも生徒会は動いていた。

サッカーの審判やバスケの得点入れ、競技の始まりと試合の点数を放送で流したり……

「きょーちゃんは暫く休んでいていいよ」

由美ちゃんが言ってくれたけれど、私だって生徒会メンバーですから!

……と言っても、地味な私はテニスボールの回収というじみぃーな仕事しかできませんけどね。

「山下、凄かったじゃん3位だって?」

「あ、うんありがと」

「顔赤いけど暑いんじゃないのか?ジャージ脱いだら?」

その会話を聞いていた由美ちゃん達がわっと集まった。

「脱がしちゃえ!脱がしちゃえ!!」

「ちょっと、やめてよー」

「さっきみたいに倒れたらどうするの?」

由美ちゃんのお言葉はごもっとも。私はなすすべもなくジャージの上を脱がされてしまった。

「って、このホータイどしたの?」

想像していたとおり、やっぱりこの包帯は目立つよね。

でも、傷口を魅せるわけにもいかないし。

「野良猫にひっかかれてね、そこからばい菌が入っちゃって……」

「うわー痛そう……で、大丈夫なん?」

「うん、今はうんでるけど痛くないよ」

「んならいいけど。それより、中山達見なかった?
 
 あいつら、生徒会メンバーなのに、働こうとしないで逃げてばっかりでさ」

「中山達なら裏で見た」

誠君が言うと、由美ちゃんは怒ったようなそぶりを見せて「探してくる!」と言って行ってしまった。

「……なぁ、山下」

「ん、何?」

「それ、猫にひっかかれた傷とちがうだろ?」

自分の体が硬直するのが分かった。

「え?ホント、猫だよ?なんで?」

「猫にひっかかれて、そんなところに傷なんてできんの?」

「できるよー。こう、ほら、だっこしてさー」

今まで誰にもばれてなかったのに、誠君の目は厳しかった。

「できるよ、信じてよ」

「……山下がそこまで言うなら信じる……でも……」

『連絡です。連絡です。生徒会長誠正君、至急体育館放送室へ』

放送がなった。誠君はそれで私への追求を諦めたのか、「じゃぁ」と行って私の元から去っていった。
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