硝子の恋

ゆがむ

体育祭が終わり、生徒会はだらーとしていた。

そりゃあそうだろう。学校祭と体育祭、この二つが終わった生徒会に当分、大きな仕事はない。

「お茶飲む人ー」

聖子ちゃんがポットとお茶の葉を持って聞いてくる。

その場にいたほとんどのメンバーが手を挙げた。

こぽこぽとお茶が注がれる。

「そう言えば誠君」

「ん、何?」

「お兄さんに会ったよ」

お茶を飲みながらおせんべいを食べていた誠君がむせる。

「え?アニキに?どこで?」

「私のアルバイト先。と言っても、結構前から顔だけは知っていたけど、話したのは初めて」

「どうりでアニキのキゲンが良かったはずだ」

まだ誠君はごほごほと咳をしながらとぎれとぎれに話した。

「キゲン?どうしてよかったの?」

「山下と話したからじゃないか」

そんな、当然でしょ?みたいに言われても……

「で、どんな話したんだよ」

「主に誠君の話。昔田んぼに落ちたとか……」

「止めてくれよ!あれトラウマなんだぜ?」

そんなこと言われても……

「なになに?なんの話?」

由美ちゃんが私たちの話に興味を持ったのか、話に入ってきた。

「あのね、誠君って昔、田んぼに落ちたことがるらしいよー。
 
 それだけじゃなくてねー……」

「もうその話はいいだろ!まったくアニキときたら……」

誠君はこめかみを押さえ、眉をしかめた。

「え?カイチョー、アニキいるの?格好いい?」

「格好いいかは分からんが教育大で学生やってる」

「すごいじゃーん!なんなら紹介してよ!」

「ダメダメ、アニキ好きな子いるらしいから」

「えー、けっちいなぁ。まあいいけど」

そう言うと由美ちゃんは私たちの元から離れていった。
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