硝子の恋
「またか」

気分良くみんなと生徒会室を出た私に待ち受けていた物は、「山子は山へ帰れ」という謎の言葉を書いた紙と、泥でぐしゃぐしゃになった運動靴だった。

幸い、いつも使っている革靴はいつも持って歩いているから無事だったけど。

泥だらけで、おまけにカッターか何かでずたずたにされた運動靴が靴箱に放り込まれていたのはびっくりした。

まぁ、運動靴なんて、体育を選択していないからあまり使わないし、購買で買えるし?

それより山子って何よ?

山下鏡子だから「山」と「子」で山子?

ソレってマジでイミフ。

悪ふざけで付けるあだ名にしちゃぁセンスないんじゃない?

つか、そんなあだ名付けられても悔しくもなんともないし。

あー、こういうとき写真取った方がいいのかな?

写メでも証拠になるだろうし。

って、自分気づくの遅くない?

前から気がついていたら、もっと早く写メ取ってたのに。

やっぱりオバカさんなんだな。私。

私は念入りに写メを撮ると、山子と書かれている紙も広げて撮った。

今度から写メを撮っておけば、のちのちに役に立つかもしれない。

……まぁ、そんな日が来ることがなければいいんだけれど。

「きょーちゃん、どうしたの?」

由衣ちゃんが外靴をはきおわってこっちに来た。私はとっさに自分の靴箱を隠すと、慌てて革靴をはいた。

「うん、なんでもない」

由衣ちゃんは不思議そうな顔をしていたけど、私は革靴をはきおえ、慌ててみんなのところに行った。

「今日もセコマよる人ー!」

由美ちゃんが手をあげて叫ぶ。

でも、今日は誰も手をあげなかった。

「ちぇっ、冷たいの。ねー、きょーちゃんは?」

「私も今月おこづかいピンチだから……ゴメンね」

まさか「お給料全部盗まれたからお金ないよー」ともいえず、そんな言葉で由美ちゃんの言葉をごまかした。

駅に向かう途中、セコマの前を通ると、男子達がたむろっていた。

「なんだか田舎臭くねーか?山の臭いにおいがしねぇ?」

「ああ、それより洗ってない犬のにおいってヤツ?」

……藤井さん達と仲がいい男子達だった。

もういいよ。すきにしなよ。
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