硝子の恋
「やまこー、やまこー」

クラスの一部の男子達が騒ぐ。

うん、藤井さんと……いいや、佐藤さんと仲がいい男子達だ。

別にどうでもいいと思っていたけれど、さすがに休憩時間に「山子」を連発されるのは正直きつい。

つーか、うざい。

こつんと私の頭に紙ヒコーキが当たった。

何だろうと開けてみるとそこには

『山子は山に帰れ』

……ああ、そうだね。あんた達が帰れ。

紙をぐしゃぐしゃと丸めてゴミ箱になげ捨てる。

このクラスには二種類の人種がいる。

一つは藤井さん達に加勢するグループ

もう一つは私たちの事を無視決め込むグループ

たまーに、無視している子達から「藤井さんが怖くて……でも、本当は友達になりたいと思っているの」

なんて言う子もいる。

でもソレってヒキョーだと思う。

ようは「私はいじめられたくないから近づかないで」って事でしょ?

それをキレイな言葉に変えただけ。

もしかしてそんなねじれた考え方する私のほうがおかしくてひどい?

でも、それなら聖子ちゃんみたいに「私は関係ないから」ってすぱっときってくれたほうがいい。

一年の頃はガマンできずに、藤井さん達に正面から喧嘩を売った事もある。

でも、担任は

「喧嘩両成敗」

とだけ言って、それ以上は何も言わなかった。

私がどれだけいじめられているかとか、そんな事を知ろうとしないで。

だから私はセンセーは信じないことに決めたの。

センセーは信用しない。クラスの子は敵。

そんな中で誰を信じたらいいのさ。

だから私は生徒会がスキだった。

同じクラスの子もいないし、男子も女子も、関係なく優しくしてくれるあの場所が。

「山下いる?」

入り口で男の子の声が聞こえた。

それを聞かれた女の子はウザったそうに私を指さした。

「ああ、山下!」

生徒会長だ。誰もがみんな一瞬私を見た。

藤井さん達の舌打ちの音も聞こえた。
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