硝子の恋
クラスの凍った空気を気にせず誠君が私に叫ぶ。

「山下、絵が完成したから見て欲しいんだ」

藤井さん達の顔がビキビキとゆがむ。

私は誠君の所に行くと、一度、二人で廊下に出た。

「どうして今来たの?放課後だったらみんないたのに」

「あ、いや、意味なんてないけど、どうしても見て欲しくて」

「完成したのは?」

「昨日だけど」

「じゃあ何で今?」

「ホームルーム前ならみんないるじゃん」

……みんないるからダメなんだって。

「じゃあ放課後見に行くよ」

「ホントだな。絶対だぞ?」

「うん、ホントだからまた後で」

それだけを言うと、誠君は自分の教室に戻っていった。

教室に戻った私には、突き刺さるような視線が待っていた。

まぁ、私が生徒会役員だって事はみんな知ってることだけど?

それを目の当たりにして、相当悔しそうなのは藤井さん達だ。

ぎりぎりと私を睨んでいる。

そのときホームルームのチャイムが鳴った。

先生が来る。

「キリーツ、礼」

センセーが入った事で教室は表向きはいつも通りに変わった。

ただ、藤井さん達の私を見る目は変わらなかった。
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