硝子の恋
朝、学校に来てみると、私の机と椅子がなかった。

そんなものはさすがに、なくすものでもないし、誰かがどこかにはこんだんだろう。

……その誰かは大体わかるけど。

「あれ~?山下さんの机と椅子ないね~」

佐々木さんがいかにも「何かを知っていマース」的な口調でそんなことを言った。

「早く見つけないとセンセー来ちゃうね」

「どうしようかー?

 みんなで探すって事になったたイヤだなー」

藤井さんと佐藤さんが話す。

「そう言えばゴミ捨て場になんかあったよね~」

……私にゴミをあされってことか。私はカバンを持って教室から出て行った。

ゴミ捨て場はグランドの隅にある。余裕を持って学校に来ている私には時間はたっぷりとあった。

「……見つけた!」

見てみれば机と椅子がゴミの中に無造作に捨てられている。

それには「死ね」とか「ブタ」とか「山子」とか色々とマジックで書かれていたし、ゴミがついて、変なにおいもしていた。

……とりあえず、机と椅子を何とかしなきゃ。

でもその前に写メ撮ろう。また、いじめられたって証拠。

私は机と椅子を担ぎ、誠君がいる教室までやってきた。

「誠君、いる?」

元々、生徒会メンバーは普通の生徒より一本早い電車で来てる。だから教室はガラガラで、教室には誠君しかいなかった。

「山下、どうしたんだ?」

「美術室にシンナーってあったよね。貸してくれる?」

「いいけど……って、その机と椅子どうしたんだよ。貸せよ」

誠君は美術準備室の鍵を出し、机と椅子を持ってくれた。

準備室に入り、シンナーでマジックを落とす前に、ゴミで汚れた机と椅子をぞうきんで拭く。

「あ、ちょっと待って」

ぞうきんを持つ誠君の手が止まる。

そこを写メで一枚、……もう一枚。

そんな事をしている私に誠君は不思議そうに見つめた。

あらかたゴミが落ちて臭くなくなったところでシンナーでマジックを落としていく。

「何があったんだよ?」

誠君が言う。

……誠君になら言ってもいいかな?

「あのね、私……」








「いじめられてるの」
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