硝子の恋
「いじめ?」

「うん。うちのクラスの藤井さんって人たちに」

「知らなかった……」

「他のクラスの事なんて知らなくて当然だよ」

「でも俺、生徒会長だぜ?そんなんでいいワケ?」

誠君はひどく落ち込んだ様子で、マジックを消していく。

「いいんじゃない?全学年、全クラスわかれって言うのは無理だもん。
 
 それにうちの担任もそんなこと知らないよ。

 知らないつーか見てみないふりしてるし」

「でも……」

「あ、マジック落ちたね。じゃあ私、センセーが来る前にもどんなきゃ。

 ありがとね、誠君」

何か言いたげな誠君を無視して、私は机と椅子を持って自分の教室に入って行った。

「あー、見つけたんだ。よかったねー」

優しそうに佐々木さんが声をかける。

……おのれがやったんだろ!

そんなことを言ったって相手に通じるワケでもなし。

そんな証拠もないし。

とりあえず、ゴミ捨て場に捨てられていた机と椅子を写メで撮ったし、準備室でも、ぞうきんで拭く前にも写メで撮ったから、それでよしとしよう。

今後の証拠になるから。

私が机と椅子を持って行ったときはすでに教室はまばらに人がいた。

みんなは何事かと私をうかがっていたが、いつもと同じいじめだと知って、巻き込まれるのがイヤで、何事もなかったかのように去っていった。

でも、一つ、いい点。

シンナーのおかげで私の机と椅子はぴかぴかになった。

それこそ新品みたいに。

……どうせまた汚されるけど?

でも、今はせめて気持ちのいい机と椅子を味わうとしましょ。

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