硝子の恋
季節は秋。

気がついたらもう10月になっていた。

私はこの季節が好きだった。落ち葉がたまる道を踏みしめると、ざくざくと乾いた枯葉の砕ける音がする。

そして1日に定期的に行われる全校集会。

生徒会メンバーは各クラスの整列整頓をしなくてはならなくて、私もその1人だっけど、私が整列をさせるのは自分のクラスじゃなくて1年のクラスだった。

それだけでもありがたい。

列を正すと、生徒会メンバーは体育館の横で先生達と同じように立って教壇を見守っていなきゃならなかった。

それは今まで通りの流れで、眠たくなる目をこすって受け流すつもりだった。

『それでは生徒会長からの挨拶です』

教頭の声が頭に響く。……もう少しマイクの音量下げたらいいのに。

そう思っている間にも誠君が教壇に上がる。

『皆さん、寒くなってきました。風邪には気をつけましょう』

誠君は長い教頭の演説の後、自分の演説を一言ですます事で生徒には人気があった。

今日もその言葉で終わるはず……だった。

『ところで、みなさんはいじめを考えた事はありますか?』

ざわ……生徒達が騒ぎ出す。

『いじめは最低な行為です。たとえどんな理由があったとしてもです。

 僕はいじめを見逃したりしない生徒会長でいたい。

 いじめに悩んでいる人は生徒会室に来てください。

 一緒に解決方法を考えましょう』

これにはセンセー達もびっくりしたらしい。

教壇から降りた誠君の周りに先生が集まってくる。

多分、誠君がそんなことを言ったのは私のせいだ。

もしかしたら生徒会がいじめに巻き込まれるかもしれない。

そう考えると、頭がぐるぐるして、地面がふにゃふにゃと柔らかくなったような気がして立っているのがやっとだった。

全校集会が終わって、まず最初の授業が自習につぶれた。

自習のプリントの内容は匿名可での「いじめについて」

……ここまで手を回しているなんて知らなかったよ。

誠君、ありがと。

でも、こんなんで解決できるわけないって私は知っている。

私は「いじめについて」のプリントを白紙で出した。
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