硝子の恋
放課後、生徒会室にて、私たちは「いじめについて」とアンケートをしたプリントの集計をしていた。

……正直めんどい

「山下、あのプリント書かなかったろ」

「なんで?」

「白紙のプリントがあった」

「匿名のアンケートなんでしょ?なんで私だと思ったの?」

生徒会室で誠君が、にらみながら私に言った。

「山下が俺の話の時、すっげー顔で俺を見ていたからさ」

……どんな顔をして見ていたんだろう。

「白紙のプリントなんて珍しくないじゃん、何枚もあったと違う?」

「それは……」

誠君が困ったように目を泳がせた。

……多分ね、こんなものまともに書こうとは誰もおもわないよ。

書いたって変わらないし。

自分がいじめられている立場だって。

自分がいじめている立場だって。

「プリント、まともなのなかったでしょ?」

「そんなことはない。きちんとしたヤツだってあった」

「きちんとしたやつ?『私はいじめは反対です。相手の事を考えない最低な行為だと思います』って、そんな事を書いている人がいじめている可能性だってあるんだよ」

「そんなこと……」

「あるよ」

「誠君はいじめたこともいじめられた事もないからそんなきれい事言えるんだよ」

1年の生徒会メンバーが一生懸命、全生徒のアンケートをまとめていた。

私はそのアンケートを一枚奪ってそのアンケートを読む。

「『いじめられているほうが悪いと思います。

 それにいじめが楽しいと思っている人はたくさんいます。

 悪いヤツをいじめてどこがわるいんですか?』」

しーんと周りが凍り付く。

「アンケートはそんなのばかりじゃない」

誠君はフォローを入れるけど、そんなの無意味だった。

「こんなのしたって変わらないよ?私、仕事終わったから、帰るね」

 カバンを持って生徒会室から出た。

 今日はなぜか1人で帰りたかった。

「いじめられている人の方が悪い……か」

呟いて、必死にその言葉を消そうとした。けれどその言葉は泥のように体に張り付いて、とれるものではなかった。
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