硝子の恋
幸いな事に、藤井さん達は生徒会メンバーに手を出さなかった。

というより、出せないというほうが正解かもしれない。

私1人ならいじめられても、生徒会メンバー全員となると、先生が黙ってはおかないだろう。

藤井さん達はそこまでの頭はまわるようだ。

でも、私が生徒会メンバーと話していると悔しそうににらんでくる。

「そういえばさー、この前彩、1人で帰ったじゃん」

「そうだねー」

「そのとき山下さんずーとこっち睨んでたの。

 もー、彩、怖くて怖くて」

「なにそれ、ひどーい、彩は何もしてないのにねー」

……そう来たか。

あのときは、私が睨んでいるというより、一方的に佐々木さんが怯えていただけだけど、そういうおきかけも出来るんだね。

教室の中で大声で話す。

と、言っても藤井さん達の正体はクラスみんなが知っているのだけれど。

知っていても、いじめられたくない人たちが藤井さん達に集まる。

「えー、佐々木さんカワイソー」

……もう好きにしていいよ。言いたいだけ言え。

他の人たちは、関わり合いたくないのか、違う話をしたり、雑誌を見せ合って笑ったりしている。

私だけ異質な存在なんだ。

でも、私には生徒会と、美術部がある。

そう考えると少し楽になった。

好きなだけ言えば?

「そういえば、山下さんって彩いじめてたもんね」

……………………は?

何ソレ、何の冗談?

「彩気が弱いから、つい山下さんにいじめられちゃうの」

佐々木さんがかわいらしいフリで言う。

まてまて、それは冗談で言っているのか?

「佐々木さんかわいそー」

「山下さんひどーい」

クラス中で私がいじめられている事知ってるはずなのに、なぜか同意する女子。

「山下さんって生徒会メンバーだから、おとがめないんだって。

 ひどいよねー」

「誰がひどいって?」

聞き覚えがある男の子の声が聞こえて、教室が静かになった。
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