硝子の恋
誠君だ。

「生徒会長にはカンケーないっしょ」

藤井さんが誠君を睨みながら言う。

「俺は生徒会長だ。生徒を守る義務がある」

扉の前に立っていた誠君はつかつかと、佐々木さんの前に立った。

「どんないじめにあったんだ?」

「物を隠されたり……」

「たとえば?」

「靴とか……」

「とか?他には?」

「………」

どうやら何を隠されたかを考えているらしいが、隠されたことのない佐々木さんには思い浮かばないらしい。

「それと落書きされたり!」

「何に?」

「教科書やノート……」

「見せてみろよ」

誠君の声が低い。

怒っているんだ。

「……捨てちゃったから証拠ないの……」

「教科書を捨てる?」

「誠君!」

私は叫んだ。

「山下……」

「もう止めなよ、女の子相手にそれはひどいよ」

「でも、山下が言いがかりつけらえたんだぞ?」

「じゃあ私が怒ればいいんじゃない。誠君がなんで怒るの?」

誠君は何かを言おうとして、止めた。そして藤井さん達を睨むと、私に「放課後、生徒会室で会議をやるから」とぽそりと伝えてきた。

そして教室から去っていった。

「こわー、山下ってオトコも使っていじめるんだね。ヒドー」

藤井さんの声が聞こえた。

……誠君が怒ってくれたのは嬉しい。

でも逆効果だよ……

とりあえず、センセーが教室に入ってきてその場は収まったけれど、あのままだったらどうなっていたんだろ……
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