硝子の恋
放課後、私は美術室に急いだ。

もちろん誠君を問いだたすために。

私が美術室についた頃、丁度誠君が美術室を開けていた。

「誠君!」

「あー山下、どうした?」

「どうしたも、こうしたもないよ!今日の朝のアレなんなの!!?」

「今日の朝……俺が佐々木を問いただした事か?」

「そうだよ!」

「だってアレ、真実じゃないだろ?」

「私が佐々木さんをいじめてるって?そりゃ真実じゃないよ。

 でも、あの場をがまんすれば、藤井さん達は何も言わなくなったのに!」

「まるで俺がよけいな事をしたみたいだな」

誠君の声が低くなる。どうやら怒っているらしい。

それでも私は言葉を続ける。

「よけいな事だよ!

 いじめがこれ以上ひどくなったらどうするの!?」

私が必死に訴えると、誠君はなにやら考えてるそぶりを見せた。

そして急にしゅんとうなだれた。それはまるで叱られた子犬のようだった。

「そっか……そうだよな。

 藤井達は何をネタにいじめるか分からないんだし、俺が出て行ってもいじめのネタにされるよな……」

ってマジに落ち込んでるし。

「……熱くなる前にそれくらい考えてよ」

「ごめん……」

うなだれる誠君を見ていると、こっちが悪いような気がしてきた。

……もういいよ。

「いいよ。もう怒ってないから」

「本当か!?」

嬉しそうに顔を上げる誠君。

「でも今日は美術部にはよらないで生徒会行くね」

私だってこれでも少しは落ち込んでるんだよ?

生徒会のみんなとおしゃべりがしたいと思うのも当然だとおもうの。

「……そうだよな……俺の顔なんて見たくないよな。

 じゃあ俺は生徒会行かないから」

……どうしてそんな考えに行き着くんかい。

でも、誤解させておいた方がこれ以上騒ぎが大きくならないだろうと思い、私はその言葉をフォローしなかった。

「じゃあ、私、生徒会行くから」

そう言って私は、生徒会へと続く階段を上りだした。
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