硝子の恋
なんか、一方的に私が責められている感じがする。

「生徒会長に聞いてみれば?」

ちょっ!そんなストレートに?

「聞けばはっきりするよ」

……確かに。

「私、美術室行ってくる」

私も猪突猛進だ。前しか見えてない自覚はある。

でも、こんなもやもやした気分のままじゃいられない。

「がんばっといで~」

何を頑張るんだ。何を。

そう思いながら私は生徒会室の扉に手をかけた。

生徒会室から出て階段を歩く途中でも、みんなの言葉がぐるぐるしていた。

『カイチョーはきょーちゃんの事好きだってこと』

まさか全校生徒の憧れで成績優秀で人がいい生徒会長がこんな私を好きになるはずないじゃん。

うん。きっと、みんなの勘違い。

階段を上りきる頃にはなんか吹っ切れていた。

照れながら「私のこと好き?」って聞かれたらキモイと思うし。

なら、さばさばと「私のこと好きなん?」って聞いた方が全然マシ。

美術室の前に立ち、ふーと深く息を吐いた。

なんだろう?やっぱり緊張しているのかな?

美術室の扉を開けようとすると、中から一年の子が現れた。

「あ、山下先輩!」

その様子がひどく慌てたもので、私は今までの事をすぽんと忘れてしまった。

「あ……何?どうしたの?」

「ひどいんですよ!

 とりあえず中に入ってください!!」

一年の子は私のウデをぐいぐいと引っ張ると、無理矢理、美術準備室まで連れて行った。

そこには呆然と立っている誠君。

「……山下……」

疲れたような顔をして誠君は私を見た。

「どうしたの?」

「ゴメン、あの絵、あげれなくなった」
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