もう、限界だから。〜両片想いの溺愛同盟〜
「唯香」
鞄から筆記用具を取り出し、席に座ると、突然健斗から名前を呼ばれた。
最初こそお互い苗字呼びだったけれど、仲が良くなっていくと、名前呼びへと変わった。
言い出したのは私は……ではなく。
なんとまさかの健斗からだった。
『鈴野より、唯香のほうが呼びやすいな』
『いきなりどうしたの?』
それは図書委員の仕事が終わり、ふたりで帰っていた時だった。
『なんとなく、唯香のほうが呼びやすいと思っただけ』
『そ、そうかな?』
その時からすでに健斗のことを意識していたから、名前で呼ばれてドキドキしていた。
『うん。だから“唯香”』
名前のところを強調され、さらにドキドキしてしまう気持ちを抑えながら、私は返事した。