もう、限界だから。〜両片想いの溺愛同盟〜
「だから、その……」
もう、無理だった。
こんなかわいい表情を、通りすがりの人にすらも見られたくない。
俺は黙って唯香の腕を引き、家へと急ぐ。
最初こそ焦っていた唯香が、家に着くと今度は逆に黙り込んでしまう。
おとなしい唯香が新鮮で、俺にとったら逆効果なのだが。
「じゃあ、適当に座っといて。
アイスとジュースとお菓子が食べたいんだろ?」
「い、今は……もう、平気」
部屋に案内するなり俺がそう言えば、唯香は恥ずかしそうに首を左右に振ってきて。
「桃のアイス、親が買ってきてるみたいだけど」
「……食べる」
桃のワードに弱いらしい唯香は、結局アイスは食べるようだった。