もう、限界だから。〜両片想いの溺愛同盟〜



「だから、その……」

もう、無理だった。

こんなかわいい表情を、通りすがりの人にすらも見られたくない。


俺は黙って唯香の腕を引き、家へと急ぐ。

最初こそ焦っていた唯香が、家に着くと今度は逆に黙り込んでしまう。


おとなしい唯香が新鮮で、俺にとったら逆効果なのだが。



「じゃあ、適当に座っといて。
アイスとジュースとお菓子が食べたいんだろ?」

「い、今は……もう、平気」


部屋に案内するなり俺がそう言えば、唯香は恥ずかしそうに首を左右に振ってきて。

「桃のアイス、親が買ってきてるみたいだけど」
「……食べる」


桃のワードに弱いらしい唯香は、結局アイスは食べるようだった。

< 184 / 269 >

この作品をシェア

pagetop