1年後だって君が好き。
4月
4月。

□■

入学式。
どんなクラスになるか、期待に胸をふくらませ、私はクラス表を見た。

「えーと、石森 湊(イシモリ ミナト)って書いてあるクラスは…あった!1年3組か!」
見慣れない名前が沢山並んであった。多分、他の小学校の人達だろう。
私と同じ小学校だった人は、女子は私を入れて3人、男子は5人だった。

私は自分の教室へ向かう。

「1ー3…は、5階かぁ。」

5階までの階段を、はぁはぁと息を切らしながら登る。教室にはまだ誰もいなかった。

「一番乗り…かな…?」

自分の名前が書かれた机に座る。
正直に言うと、同じ小学校だった人達はほとんど私とさほど仲が良くない人達だ。
私は憂鬱になる。
しかも、そのうちの男子1人は、私が小学校の頃告白して、ふられた人である。苦い思い出だ。

私が暇しながら待っているとドアが開いた。
入ってきたのは、もと同じ小学校の、
渡辺 光(ワタナベヒカル)。
この人は、今、宮田 柚子(ミヤタ ユズ)ちゃんと言う、可愛くて、成績優秀、オマケに頭も良くて、体操を習っているから、運動神経も抜群という、非の打ち所のない彼女がいる。そして、渡辺くん自身も、成績優秀、委員長に自ら立候補し、優しいという模範的な少年だった。
『そんな仲良くないんだけどな…気まずー…』
私は、そう思いながら、話しかけた。

「渡辺くん、同じクラスだったんだね!」

「あ、石森、1年間、よろしくな!」

そう言って、渡辺くんは微笑みかけてきた。エクボが愛らしい。

「ねぇ、渡辺くん」

「どうした?」

「やっぱり、柚子ちゃんと同じクラスが良かった?」

皮肉を含んだこの質問。渡辺くんは、どう答えるんだろうか。

「そりゃあ…な、」

渡辺くんは、少し悲しげな表情で、どこかを見つめた。

「あっ…」

私は、この質問をしたことを少し後悔した。
< 1 / 1 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:3

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop