僕の1番大切な人
兄さんはソファに座って、そして、言った。

『旅行、楽しかったって、愛美が言ってたよ、ありがとうな』

『いや、そんなことはいいんだけど、姉さんはどこに行ったの?』

『…』

しばらくの沈黙。

兄さんが重い口を開く。

『この2日間、いろいろ考えたんだ。自分はどうするべきなのか』

『何のことだよ』

『愛美と…離婚しようと思う』

嫌な予感が的中した。

『何なんだよ、離婚って、そんなの急に言われても』

『…ずっと前から考えてたんだ。でも今まで答えを出せなかったんだ』

僕はもう、姉さんのことが心配でたまらなくなった。

『姉さんはなんて?』

『旅行から帰ってすぐに、愛美には伝えた。離婚したいって。そしたら…笑って、うなづいてくれた…受け入れてくれたんだ』


姉さん…


姉さんの気持ちを思うと、胸が張り裂けそうだった。
きっと姉さんは、兄さんのこと、本気で好きだったんだろう、浮気されても、それでも一緒に居たいと願ってたんだ。


それなのに…


兄さんは、姉さんの気持ちより、自分の幸せを取ったんだ。

僕にはそう感じて、どうしようもなく腹が立った。






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