トリップしたら国王の軍師に任命されました。
織田信長のように、恐怖で人を支配してはいけない。秀吉のようにときには情けを見せ、人の心をほどいていかなければ。
明日香が考えていると、アーマンドが立ち上がった。
「この一件、私に任せていただけないでしょうか」
「えっ?」
そんなことを彼が言うのは初めてだ。明日香とジェイルは彼を見上げた。
「交渉に行かせてもらえないでしょうか。これ以上歯向かえば、ビアンカ王女の命はないと」
「そんなこと、敵は百も承知じゃないか?」
カルボキシルの国王は、ビアンカの父だ。彼だって、自分がシステインに反旗を翻せば娘がどうなるかは覚悟しているはず。
「もちろん、それだけではありません。他の条件も含め、まずは交渉するべきです」
システインの属国になったとき、カルボキシルの領地を三分の二ほど取り上げた。他にも毎年穀物を献上したり、武器弾薬の過剰在庫を持つことを禁止したり、色々と条件を付けてある。
「反逆を起こさせないための措置だったけど、厳しすぎたかな」
その条件を不服とした反逆なら、まだ話し合いの余地があるかもしれない。
「しかし、交渉に行けばお前の身が危ない」
ジェイルが難色を示す。