トリップしたら国王の軍師に任命されました。
「たしかに。黒田官兵衛も交渉に行ったら逆に捕まっちゃって、一年くらい帰って来られなかったことがあるもの」
「カンベエというやつのことは知らんが、最悪お前が殺されるぞ」
「それでもいいのです」
決然と言い放つアーマンドの様子に、明日香はピンと来た。
(もしかして……こんなに必死になるということは)
ジェイルが明日香との結婚宣言をしたとき、ビアンカ王女を褒めちぎっていたのは、このアーマンドじゃなかっただろうか。
「あなた、ビアンカ王女が好きなの?」
明日香が単刀直入に聞くと、さっとアーマンドの頬に朱が走る。
「本当か。今までそんな素振り見せなかったじゃないか」
「ああああ当たり前です。王女と私では、身分がつりあいません」
身分が違うから、ビアンカ王女に恋をしつつも、行動に移せなかったアーマンド。明日香は表情に出さないよう、内心で悶えた。
(はうう、身分差恋愛。キュンキュンしちゃう。秀吉とおねみたい)
もともと農民だった秀吉は、武家の娘だったおねに一目惚れした。
「お前のいいところをビアンカ王女に見せたいところだが……」
ジェイルは言葉を濁した。正直、まだ若く外国と交渉をしたことがないアーマンドでは不安がある。明日香も同じ考えだった。