トリップしたら国王の軍師に任命されました。

「交渉が一番うまそうなのは、バックスかしら」

 長く宰相の地位に就いている彼なら、任せられそうだ。

「そうだな。バックスに行かせよう。アーマンド、お前はビアンカ王女の傍についているがいい」

「いえ、あの、陛下」

「わかった、言い換えよう。お前に王女の監視役を任せる」

 アーマンドは赤い顔で口をぱくぱくさせていた。が、結局は頭を下げて命令を受け入れた。速やかにビアンカを地下牢へ案内するように言い渡すと、彼はうなずいて部屋から出ていった。

「ちょっと。アーマンド、可愛いんだけど」

「そんなこと言っている場合じゃないだろう。いきなり城を奇襲して反乱を起こされたんだぞ。交渉だけでうまくいくと思うか?」

 人質がいるにも関わらず反旗を翻したということは、既に全面戦争をする覚悟があるということじゃないだろうか。ジェイルはそう予想する。

「わからない。うまくいけばいいと思っている」

「やっぱり、お前は優しいな」

 悩む明日香の頭を、ジェイルがなでる。明日香はそれだけで、心が少し軽くなるような気がした。


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