トリップしたら国王の軍師に任命されました。
8.親衛隊長、逮捕される
カルボキシルとの戦いで痛み分けとなった明日香たちは、王城に戻った。なんとか奪い返したプロリン城には、百戦錬磨の兵士たちを置いてある。
明日香は行軍中に左腕の傷を十分手当てできていなかったせいか、帰ってくる途中から熱を出し、王城に着いても二日間寝込んでいた。
(うう……抗生剤のある世界が恋しい……)
侍医に手当てをされ、日に日に回復してきてはいる。が、「日本の医療ならもっと早くよくなるのに」と思わずにはいられない明日香だった。
「あの軍師さまが、痛み分けとは」
「今までの勝利は偶然だったのでは?」
板に乗せられて運ばれた明日香を見て、国民や兵士たちは不安に包まれていた。
今まで重ねてきた勝利が、とても儚いものに思えたのだろう。
とりあえず寝込んでいたおかげで、これらの声が耳に届くことがなかったのは、明日香にとって幸運だった。
ジェイルは国務に追われ、四六時中というわけにはいかなかったが、可能な限り明日香の傍についていた。
「ごめんね……いつまた敵軍が襲ってくるかわからないのに」
ベッドに横たわったまま、明日香はジェイルを見上げる。
「大丈夫だ。今は何も考えずに休め」
ジェイルは優しく微笑み、明日香の額を撫でた。それだけで、彼女は安堵する。
そんな彼女を見て、ジェイルは複雑そうな表情を浮かべていた。