トリップしたら国王の軍師に任命されました。
バックスが言わんとすることがわからないほど、ジェイルは愚鈍な王ではない。
「こちらはアスカさまの言う通り、敵に出陣を気取られぬよう、飯炊きの湯気も出さぬように気を配っていました」
つまりバックスは、味方の誰かが敵軍に情報を流したのではないかと疑っているのだ。
「わかっている。皆まで言うな。お前のことだ。すでに調査を進めているんだろう?」
誰かが裏切っているなら、すぐに見つけ出して処罰しなければならない。ジェイルの言葉を、バックスは静かに肯定した。
「私が怪しいと思う人物の周囲を調べております」
「誰だそれは」
眉間に皺を寄せ、ジェイルが聞き返す。バックスは「お耳を」と言って耳打ちできる距離に近づいた。
彼の口から出た名前に、ジェイルは目を見開いた。