トリップしたら国王の軍師に任命されました。

 その二日後。やっと回復したアスカは、侍女が運んできた粥をベッドに座ったまますすっていた。

「そろそろ働かなきゃ……」

「王妃さま、無理は禁物ですわ」

 侍女たちが体を拭いてから新しい寝間着を着せようとするのを、彼女は拒否した。

「ドレスを着させて。いつまでも寝ていられないの」

 初めはおろおろしていた侍女たちだったが、結局は王妃の命令には逆らえない。コルセットはせず、ゆったりとしたドレスを選んで着せ、髪も小さな飾りをつけるだけにとどめた。ヒールの低い靴を履いて立ち上がると、それだけで本調子でない体はふらついた。

「王妃さま」

「大丈夫、ちょっとよろけただけよ。ジェイルはどこかしら?」

 目が覚めたら、ジェイルは傍にいなかった。きっと国務中だろうと推測し、明日香は侍女に付き添われ、彼のいそうな部屋を目指す。

(私のせいで、カルボキシルだけでなく、近隣諸国になめられたかもしれない)

 一度は配下になった国に裏切られたことで、明日香は焦っていた。諸国が力を合わせて挟み撃ちなどしてきたら最悪。ここで落ち着き、もう一度諸国にシステインの力を見せつけたいところだ。

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