トリップしたら国王の軍師に任命されました。


 ジェイルの執務室に向かっていると、なにやら廊下の先が騒がしい。

「何事かしら?」

 侍女と顔を見合わせた明日香は、慎重にそちらに近づく。廊下の角を曲がると、地下牢に繋がる階段が見えた。

「まさか、ビアンカに何かあったんじゃあ」

 自分の知らないうちにビアンカの処刑が決まったりしたのでは。そう考えた明日香は、全身に寒気を感じた。

 早足で階段の方に向かう。明日香がそれを降りる前に、地下から何人もの兵士が階段を上がってきた。

「えっ!?」
 図らずも兵士の前に立ちふさがってしまった明日香は、驚きの声を上げた。

 両手を拘束されたビアンカが、兵士たちに囲まれている。それはまだわかるが、その後ろから出てきたのは、なんとアーマンドだった。ビアンカよりも厳重に、縄でぐるぐる巻きにされている。

「アーマンドまで。ねえ、どういうこと?」

 先頭の兵士に詰め寄ると、彼は明日香に敬礼してから答えた。

「この者たちは、敵国と通じた罪で引っ立てられている最中なのです。今から国王陛下の御前に参ります」

「なんですって」

 アーマンドに視線を送る明日香。しかしアーマンドは冷静に前を見据えるだけで、何も話そうとはしなかった。

「では、御免」

 明日香の横をすり抜け、一行は歩いていく。明日香は彼らのあとをついていくことにした。

< 130 / 188 >

この作品をシェア

pagetop