トリップしたら国王の軍師に任命されました。

 おとなしくしていたアーマンドが、初めて反論した。決然と言う彼の目に揺らぎはない。

「やっぱり、何かの間違いじゃないですか?」

 ジェイルの後ろに控えているペーターが言う。

「しかし、証拠があるそうじゃないか。アーマンドの部屋から、アスカさまを襲ったとみられる刃物が見つかったとか」

 重臣の一人が言うと、兵士がジェイルの前に跪いた。彼が差し出した両手の上には、鋭いナイフが乗っている。刃は曇っていたが血は付いていなかった。布で拭きとられたのだろう。

「アーマンド、これに見覚えは?」

 無表情を保ち、ジェイルが問う。必死に中立の立場に立とうとしているように、明日香には見えた。

「ありません」

 短い反論。重臣たちはざわざわとしはじめた。

「じゃあどうして、これがお前の部屋に?」

「わかりません」

「しらばっくれるな!」

 重臣たちから怒号が飛ぶ。アーマンドはじっとジェイルだけを見つめていた。

「……証拠があるからには、何の咎めもなしとはいかない」

 ため息交じりに、ジェイルは言葉を吐き出す。

「待って。こんなの、公平じゃないわ。もっとちゃんと調査して、公平な裁判を開くべきよ」

< 132 / 188 >

この作品をシェア

pagetop