トリップしたら国王の軍師に任命されました。
おとなしくしていたアーマンドが、初めて反論した。決然と言う彼の目に揺らぎはない。
「やっぱり、何かの間違いじゃないですか?」
ジェイルの後ろに控えているペーターが言う。
「しかし、証拠があるそうじゃないか。アーマンドの部屋から、アスカさまを襲ったとみられる刃物が見つかったとか」
重臣の一人が言うと、兵士がジェイルの前に跪いた。彼が差し出した両手の上には、鋭いナイフが乗っている。刃は曇っていたが血は付いていなかった。布で拭きとられたのだろう。
「アーマンド、これに見覚えは?」
無表情を保ち、ジェイルが問う。必死に中立の立場に立とうとしているように、明日香には見えた。
「ありません」
短い反論。重臣たちはざわざわとしはじめた。
「じゃあどうして、これがお前の部屋に?」
「わかりません」
「しらばっくれるな!」
重臣たちから怒号が飛ぶ。アーマンドはじっとジェイルだけを見つめていた。
「……証拠があるからには、何の咎めもなしとはいかない」
ため息交じりに、ジェイルは言葉を吐き出す。
「待って。こんなの、公平じゃないわ。もっとちゃんと調査して、公平な裁判を開くべきよ」