トリップしたら国王の軍師に任命されました。

 明日香は二人の前に立った。日本なら、出てきた凶器から指紋やDNAを採取、容疑者のものと照会できる。しかしここでは、状況証拠だけでどんどん話が進んでいってしまう。

「しかし野放しにしておくと、またあなたが襲われる」

 バックスが厳しく言い放つ。

「それに、ふたりがアスカさまの作戦をカルボキシルに流した疑いもあるんだろう?」

「ビアンカ王女はどうしてもカルボキシルに勝ってほしいだろうからな」

 重臣も、もう犯人をアーマンドとビアンカと決めつけているような目で見ている。

「それこそ証拠がないでしょう」

 自分の作戦がまずかったせいで、ふたりにさらなる疑いがかけられている。明日香にとってそう思うのは悲しすぎた。

「もうやめろ。調査は引き続き進めることとする。最終的な判断が出るまで、ふたりを国外に追放する」

 ジェイルが大声を張り上げる。反論する者はいない。

(よかった。ジェイルが国王で……)

 いきなりふたりが死刑にされてしまったらどうしようかと思ったけど、そこはさすがジェイルだ。

(それにしても、本当にアーマンドが私を狙ったのかしら。それとも)

 あの夜は真っ暗闇で、相手の顔はおろか、どんな体型をしていたのかすら覚えていない。

(それとも、誰かにはめられた?)

 連れていかれるふたりを見て、明日香は身震いした。

 何かよくないものが、この城に入り込んでいる。

 そんな気がした。

< 133 / 188 >

この作品をシェア

pagetop