トリップしたら国王の軍師に任命されました。
「ジェイル、考え直して。ビアンカはともかく、アーマンドははめられただけかもしれない」
二人でジェイルの私室に戻るなり、明日香が説得にかかる。
「わかっている。だから、ひとまず謹慎してもらうんだ」
ジェイルは疲れた表情で椅子にどかりと腰を下ろした。
「国のために、時には非情にならなきゃいけないときもある。ペーターは俺に教えてくれた。でも俺は、身近な人間を平気で犠牲にすることはできない」
大きな手で額を押さえる彼は、自分がどうするべきか迷っているように見えた。
「私は優しいジェイルが好きだよ」
ゆっくり近づいていくと、彼は座ったまま明日香を抱き寄せた。ジェイルの顔が明日香の胸に埋まる。
「誰かに王位を渡しちまおうかなあ」
「いいんじゃない。ジェイルがいいなら」
明日香が軍師として追い込まれているように、ジェイルも自らの国王としての資質に疑問を抱いていた。
「……ダメだよなあ。今放り出すなんてできない。ますます国が混乱してしまう」