トリップしたら国王の軍師に任命されました。

「結局、私たち真面目なのよね」

 いつでも山奥に帰ってしまえばいいと思っていたけど、現実はやはりそう簡単にはいかない。二人の気持ちが、それを許さない。

「もう少し頑張ってみるか」

 ため息交じりではあったけど、前向きなジェイルのセリフが聞けた。明日香は静かにうなずく。

(私がでしゃばったりしなければ、ジェイルを悩ませることもなかったのに……)

 ジェイルを抱きしめる明日香の腕に、力がこもった。

(私がこの世界に来なければ、ジェイルは国王になることなく、心穏やかに暮らせたかもしれない)

 明日香の胸は、申し訳なさでいっぱいだった。


 二日後。ジェイルは急にアミノ国に出かけることになった。

「カルボキシルと戦うには、彼らの手助けも必要になってくるだろう。話をしてくる」
「私も一緒に行くわ」

 当然のように明日香が言うと、ペーターが遠慮がちに口を開く。

「アスカさま、戦いに行くのではありません。アミノ国と極秘で会談を行うのです」

「わかっているわよ。だから私も行きたいの」

「いいえ、アスカさまには残っていただきたいのです」

 明日香は不満気に口を尖らせる。ペーターは優しい父親のように、彼女に言い聞かせた。

「陛下は変装して、ごくわずかな兵を連れて城を出ます。あなたを連れていくと、その分護衛の数が増えてしまう。すると周囲に気づかれやすくなります」

「う……」

「いつも陛下から離れないあなたがここにいれば、敵の目は欺かれる」

< 135 / 188 >

この作品をシェア

pagetop