トリップしたら国王の軍師に任命されました。
「結局、私たち真面目なのよね」
いつでも山奥に帰ってしまえばいいと思っていたけど、現実はやはりそう簡単にはいかない。二人の気持ちが、それを許さない。
「もう少し頑張ってみるか」
ため息交じりではあったけど、前向きなジェイルのセリフが聞けた。明日香は静かにうなずく。
(私がでしゃばったりしなければ、ジェイルを悩ませることもなかったのに……)
ジェイルを抱きしめる明日香の腕に、力がこもった。
(私がこの世界に来なければ、ジェイルは国王になることなく、心穏やかに暮らせたかもしれない)
明日香の胸は、申し訳なさでいっぱいだった。
二日後。ジェイルは急にアミノ国に出かけることになった。
「カルボキシルと戦うには、彼らの手助けも必要になってくるだろう。話をしてくる」
「私も一緒に行くわ」
当然のように明日香が言うと、ペーターが遠慮がちに口を開く。
「アスカさま、戦いに行くのではありません。アミノ国と極秘で会談を行うのです」
「わかっているわよ。だから私も行きたいの」
「いいえ、アスカさまには残っていただきたいのです」
明日香は不満気に口を尖らせる。ペーターは優しい父親のように、彼女に言い聞かせた。
「陛下は変装して、ごくわずかな兵を連れて城を出ます。あなたを連れていくと、その分護衛の数が増えてしまう。すると周囲に気づかれやすくなります」
「う……」
「いつも陛下から離れないあなたがここにいれば、敵の目は欺かれる」