トリップしたら国王の軍師に任命されました。

 どうやら、この話もごく一部の者しか知らない極秘事項らしい。ひそひそと声をひそめるペーターの後ろから、ジェイルが近づいてくる。

「心配するな。お前の周りには信頼できる護衛を置いていく」

 詳しく聞けば、部屋の中にも外にも、いつもの倍の見張りや護衛が明日香に付くらしい。

(まるで監視されるみたい)

 彼女は心の中でため息をついた。

「わかった。急に敵に攻められたときのためにも、誰かが残らなきゃね。気をつけていってらっしゃい」

 明日香が抱きつくと、ジェイルは彼女の白い頬にそっと口づけた。



 国王一行は、夜中に極秘で城を出ていった。残された明日香は眠れない夜を過ごし、そのまま朝を迎えた。

 ジェイルには親衛隊と宰相のバックスがついている。大勢の敵に囲まれたりしないよう、明日香には祈ることしかできない。

(早く、無事に帰ってきて……)

 しかし、彼女の祈りは裏切られ、システインには暗雲が立ち込めつつあった。

 ジェイルがアミノ国に向かってから三日後、明日香の元にある知らせが届けられた。

「カルボキシル軍が城を出発した?」

「今回はプロリン城ではなく、迂回して直接この王城を攻めてくるという情報が、諜報部隊からもたらされました」

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