トリップしたら国王の軍師に任命されました。

 今までの経験を活かし、最年長の重臣が伏兵を置く場所を提案する。他の重臣たちも彼の予想を支持した。

「じゃあ、伏兵を置くのはここからここね。敵をおびき寄せる役目は誰の隊がやってくれる?」

「私が引き受けましょう」

 明日香の言葉を無視するものはおらず、必ず誰かが返事をした。順調に会議は進み、作戦が決まった。

 誰よりホッとしていたのは、明日香自身だ。あとはジェイルの帰りを待ち、敵軍が攻めてきたら指揮をするだけ。

「あとは国王陛下の帰り道ですね。どこに兵を置いておくか……」

 顔に傷痕がある重臣が地図をにらむ。狭い山道を通り、ジェイルは帰ってくる。敵が襲ってこられないような場所に兵をおく必要はない。

「そうね。それが一番難しい」

「よろしければ、私の隊のものに現地を案内させましょうか」

 明日香は迷った。アーマンドが逮捕されたが、本当に彼が自分を襲った犯人だったのだろうか。まだ犯人は自分の近くにいるかもしれない。そう考えずにはいられなかった。

(少人数で出歩いたら、危ないかも。でもぞろぞろ兵を引き連れていくわけにもいかないし……)

 ジェイルの帰り道の詳細は、地図ではわかりづらい。彼の命を守ることが最優先だ。自分の身を案じている場合ではない。明日香は決断する。

「じゃあ、一隊貸してくれる? みんな農民の服を着て。背の高い草を刈って、敵兵が潜伏して近づけないようにしましょう」

 明日香は現地を視察した上で、どうしても不安な部分に伏兵を置くことに決めた。あまり多くの兵を置くと、敵に察知されてしまう。

 長い会議は夜まで続いた。次の日の朝、明日香は城のことをペーターに任せ、少数の兵士とこっそり外に出ていった。

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